アリアンロッド2Eキャンペーン終了2

 GMをやっていた『アリアンロッド2E』のキャンペーンが9月で終了した。2017年の2月に開始したので2年半かけて全8回(2回ランダムダンジョンを含む)を行ったことになる。自分が何度かシナリオを落としたことと、参加者の都合がなかなか合わせられなかったこともあり、前のキャンペーンに較べると随分長くかかってしまった。
 続きの方へ思いついたことをつらつら書いてみる。

 今回は沙漠の国註1)キルディアを舞台に選択。サンドワームの討伐を最初に持ってきて註2)、その後裏で陰謀を巡らすボス敵と対決していくことにする。
 陰謀を巡らす敵は第1話に謎の女として名前だけ登場させ、キャンペーンを進めながら考える。PCの所属する部族と対立する沙漠の保守派、その保守派が与する“竜の顎門”註3)、その保守派に錬金技術を提供する謎の女という構成に決定し、最終的にはPCの設定を組み込んで、因縁のある邪悪な錬金術師が謎の女の正体とした。
 前回のキャンペーンと同じく、今回も人間が敵になってしまった。キルディアが舞台なので、“ヴァンパイアの王”ブレアスや、“バグベアの女王”エフネ註4)などの妖魔を使用しても良かったのだが、使用せず。邪悪化しかけた人間は出てきたが、結局ランダムダンジョンでプレイした回以外は魔族も(純粋な)妖魔も出てこなかった。まあ他の人のキャンペーンでは妖魔なども出ているので、これはこれでいいか、という気はしている。「所詮、人間の敵は人間」なのである(笑)。

 今のTRPGでは、シーンに登場しておらずPCが知り得ない情報もプレイヤーには公開するのがほぼ常識となっているが、今回は敢えてリバースハンドアウト註5)や個別チャットを使用して、特定のプレイヤーにのみ秘密の情報を与えることをしてみた。もう少しPC同士で会話してほしいなあと常々感じていたので、会話を促すきっかけとなれば、という意図である註6)。これはそこそこ上手くいったかなという感触はある。
 ただ、秘密の情報を所有するのが特定のPCにのみ偏ってしまって、それ以外のプレイヤーには申し訳ない気持ちだ。全PCが何かしらの秘密の情報を持っている状況が理想なのだが、力不足でそういったシナリオは作れなかった。

 大体自分のGMのキャンペーンではNPCの印象が薄くなりがちなので、毎シナリオのオープニングフェイズで同じような行動を取ることを繰り返して印象付けを試みた。格言を引用するNPCもその一環。格言は沙漠らしいものをネットで検索したが上手いこと見つからず、結局手元にある諸橋轍次の『中国古典名言事典』からほとんど引用した。
 世界一の魔術師を名乗るPCと、霊獣エポナブス註7)を探求するPCがいたので、同じく自信家の魔術師でエポナブスを求めて沙漠にやってきたNPCを登場させて、2人のライバルとしようと考えていたのだが、どうしても本編の話に絡められず断念した。これはかなり後悔している。

 10レベルから始めた比較的高レベルキャンペーンだった註8)ので、判定に使う能力値にPC間で格差が生じ、折角プレイヤーが取得した一般スキルがあまり役立たないことは結構悩んだ。最終的には「《○○》のスキルを持っていれば(スキルの効果にない)【××】判定に+1D」註9)のような形にすることが多かった。最終回では「《○○》のスキルを持っていれば好きな能力値で判定を行える」註10)という変則的な判定も出してみた。
 自分のシナリオでは情報収集判定を多用するので、そういう傾向を汲み取ってか、ミドルフェイズで使用できるスキルを取得してくれたPCがいてくれたことは嬉しい。

 FS判定は、どうしても一番能力値の高いPCに難易度を合わせることになるので註11)、情報収集と同じように能力値格差が広がる高レベルでは苦労した。ただ、高レベルであれば使用可能なリソースも多いので、ムリヤリ能力値の低いキャラクターでも判定を成功にできてしまうのも面白いところだ。
 あとは支援判定の難易度も進行判定と同じになってしまうので、手すきのPCが気軽に行うことが難しいのもやや問題に感じた。高レベルのFS判定では支援判定は低めの固定値、または進行判定の難易度-5等にして挑戦しやすくした方が良いかもしれない。
 複数のFS判定を同時進行する、というのもやってみた註12)。ただ2つ同時進行するだけでは、単に複数回FS判定するのと大差ないので、お互いの進行状態が有機的に関連するように作成した。やってみた結果としては、もう少し検討する余地はありそうだ。
 シナリオのミドルフェイズをFS判定に頼り過ぎなきらいがあるという自覚はあるのだが、もう少しFS判定を使ったギミックを考えてみたいので、次の機会があればまたFS判定で変わったことをやりたいと思っている。

 サプリメントを購入しているのに使わないデータがあるのはもったいないということで、「誓約」註13)を取れるよう初期作成時に多めに成長点を配布したりした註14)
 シナリオに全然絡めなかったのは、まあ最初からあんまり使う気がなかったから。追加データとして使ってもらえればいいかなくらいの感覚だったり。
 同じようにいろんなアイテムを使用してほしいという意図で、各シナリオで得られる金銭も多めにした註15)。その甲斐もあって、今のオンラインセッション環境では初めてケセドの杖を装備するPCが生まれた(結局有効に活用できる場面が出てこなかったが……)。

 ギルドサポートの《救出》は、判定に失敗した時の保険に使える、という形で使用できる箇所を作成した。ただ、どうしても戦闘に役立つギルドサポートを取りがちな中で敢えて選択してくれたのだから、もう少し積極的に使える場面を作るべきだったと反省。もしくは《救出》が使える判定での難易度を大分高くするなど、もう少しやりようはあったかなと思う。

 舞台が沙漠のわりに、あまり沙漠感が出せなかったかなというのはこれまた後悔。いろんな沙漠要素のごった煮で雰囲気を出そうと試みたが、上手くいかなかった。飲み水の管理をして沙漠を探索する、というようなシナリオギミックも考えたが、面倒なだけでさほど面白みもなさそうなのでやめてしまった。
 思い出したように突然砂嵐が発生するイベントが数回あったのは、少しでも沙漠感を出すための苦肉の計である(苦笑)。

 と、まあ振り返った結果反省点が多くを占めることとなってしまっていたが、楽しいキャンペーンであった。
 高レベルPCとの戦闘は、敵データを作るのが大変だったが、そのデータ作成も含めて楽しいものだ。敵データについては、後日別稿で書くことにする。
 各PCともキャラが立っていたのに、上記のボス錬金術師の設定を作ったプレイヤーのPC以外のPCをほとんど掘り下げられなかったのは申し訳ないと感じている註16)
 キャンペーンが終わると「もうシナリオ作らなくていいんだ!」と解放感に襲われる。楽しいとはいえ、シナリオを作るのはやはり大変なのだ。大体徹夜になるし註17)
 とはいえ、他GMのセッションを経験すると、また自分でもGMをやりたくなってくるだろう(笑)。ひとまずは単発で何かやって、キャンペーンはその後考えるとするかな。

■註

  1. 砂漠ではなく、沙漠と書くのは中学の時の教師の「砂があるからさばくじゃない、水が少ないからさばくなんだ」という教えによる(笑)。
  2. 意思のない獣相手ではキャンペーンを引っ張るのが難しい。『アリアンロッド2E・リプレイ・サヴァイヴ!』ではその辺りを上手く書いてくれるのかな? と期待していたのだが……。
  3. 公式に設定されている沙漠の暗殺者集団。
  4. ブレアス・エフネのどちらも公式で設定されているシナリオフック。
  5. 『アリアンロッド2E』にはリバースハンドアウトのルールは存在しないが、ここでは他のプレイヤーには開示しない個別のハンドアウトを表すために一般名詞的に使用している。
  6. 当然プレイヤー同士では会話しているが、キャラクターとしての会話がPC同士では少ないのだ。
  7. 『エクスパンションブック』に記載のある、後述の「誓約」で取得できる乗騎。
  8. 我々のオンラインセッションの環境では。
  9. 「判定:情報収集判定(【知力】【精神】)28 《ヒストリー》または《カルチャー:エリンディル西方》があれば判定に+1D」のように記述。
  10. 「[錬金術判定](《アルケミーノウリッジ》を持っていれば、[錬金術判定]の基準値を好きな能力値に変更して判定を行える)」のように記述。
  11. 成功を前提に作るとはいえ、成功するのが確実な判定なんてサイコロを振る意味がない。
  12. 一応『アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ』に複数のFS判定を同時に行うシナリオは存在する。
  13. 『エクスパンションブック』に記載の追加データ。取得した場合、特定の条件を守らないとペナルティが発生するが、条件を破らなくてはいけないような状況はシナリオ上では作成しなかった。
  14. 取得しなかったPCや複数取得したPCもいた。
  15. ランダムダンジョンで高額なドロップ品を落とすエネミーが出現したこともちょうど良かった。
  16. いかん、また反省になってしまった。
  17. 最終回は事前に大部分を作成済みだったのに、結局微調整して完成が直前になってしまった(苦笑)。調整でミドルフェイズでやるつもりのイベントをオープニングフェイズに移設したら、事前に配布したハンドアウトとオープニングフェイズがややズレているPCが生まれてしまったりも……。

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