アリアンロッド2Eキャンペーン終了
昨年5月からオンラインで始めた『アリアンロッド2E』のキャンペーンが11日全7話で終了した。自分がGMを務めるキャンペーンは久々、単発ではいくつかやっているが続き物はしばらくやっていなかった。
単発と違って個々のシナリオの作成は楽なのだが、やはり話をまとめて結末に向かわせるキャンペーンならではの労力はかなり大きい。とは言え、やはり連続した話を収束させて1つの物語にする楽しみはキャンペーンでなければ味わえない。
その一方、どうも独り善がりだったかなあと思う部分もあったりする。プレイヤーに伝わっているのか、理解してもらえているのかは常に不安を覚える。とはいえこれは今回キャンペーンに限ったことではなく、GMやるたびに抱いている感覚なのであるが。
ネット上の掲示板等で情報やNPCを提示したりするのは、少しでもプレイヤーに理解してもらうため、最近はずっとやっている。
以前にも書いたが、基本的に世界や国を救うのではなく、身近な人を助ける日常系をコンセプトに各シナリオを作成した。舞台をグランフェルデンにして、今まで別GMでは余り出て来なかった公式NPCを出すことも意識した。PCのウォーリアと、そのPCに対してちょっとお姉さんぶるアリエッタの関係は気に入っている。
データ面では情報収集判定を多用するシナリオにするのを心掛けた。ギルドサポートの《情報網》を《蘇生》や《祝福》……とまでは行かないまでも、《目利き》辺りよりは使えるようにしたいと考えてのことである。戦闘等のその他のギミックについてはそこまでこだわるつもりはなかったのだが、最終的には毎回何かしら入れることとなった。自分の性格だろう(苦笑)。
以下に各話ごとの内容を振り返る。
■第1話「偽りの“白”」
ルモント商会による贋のヴァイス磁器が出回る。その製法と見分け方を手に入れたムガードが、ルモント商会を強請るも、逆に命を狙われる。
PC一行はムガードの妹レミアの依頼を受けて、ムガードを捜索、ルモント商会の悪事を暴く。
●獲得成長点:67点
今回のキャンペーンでは上述の「日常的な話にする」というお題の他に、もう一つ「人間を最終ボスにする」ということを決め、最終回では犯罪組織か邪神教団との対決に持って行こうと考えていた。そのため1話では贋ブランドのヴァイス磁器を売る犯罪組織を出し、その前哨とすることに。
シナリオヒロインは贋ヴァイス磁器の秘密を掴んで大金をせしめようとする兄ムガードと厄介事に首を突っ込む兄を心配する妹レミアという判りやすい形。ムガードはレミアに少しでも楽をさせようと考えて危ない橋を渡って金を稼いでいたのだが、余りプレイヤーには伝わっていなかったようだ(苦笑)。
贋物の秘密を知るため襲われる兄を助けると、今度は取引材料として妹が誘拐される。シーフPCが隠密状態で移動できるため、そのスキルを使用してヒロインを救助できるようにクライマックスは作成した。
■第2話「おいかけてはるか遠くへ」
アンデッドの王であるフランカの“炎の宝珠”をヴェルクが盗み出したため、街がフランカの操るゾンビに制圧される。
PC一行はヴェルクを追いかけてパリス同盟内を捜索、ブル・ジョワンニに宝玉を売ったことを確認したが、ジョワンニはドラゴンに襲われ宝珠を奪われていた。ドラゴンを倒し宝珠をフランカに返すと彼はゾンビの群れを連れて何処かへ去って行った。
●獲得成長点:64点
2話は自分がGMではなく、プレイヤーとして参加。
PCギルドのライバル的立ち位置とすることを考えて、1話終了直後にデータを作成しておいた“ダグデモアの竪琴”という3人組ギルドがあり註1)、その中の1人、弓使いのミアをPCとして使用することに。結局対決するシナリオは作成しなかったため、データはここでしか役に立たなかった註2)。
■第3話「ダンジョンアタック」
脅迫の罪で捕まっていたムガードが釈放され、“地の時代”の遺跡の情報を持ってやってきた。
PC一行が遺跡へ行くと中はダンジョンとなっており、七大神の像が置いてあった。最深部に像をはめ込むことで奥への扉を開き、巨大な賢者の石を手に入れる。
●獲得成長点:110点
《情報網》のこともあり、基本的にシティ・アドヴェンチャー主体の予定ではあったが、まあ1回くらいダンジョンもやるかと急遽作成した註3)。
詳細はこちらに記載してあるのでここでは詳しく書かない。戦闘にギミックを組み込みたくなり始めたのがこの辺りから。
ラーフ語の看板や神々のリドル(というほどのものではないが)など世界設定を交えたのは、とかくプレイヤーはデータは見ても世界設定は読まない傾向があるので(笑)その紹介。
トラップは複数スクウェアに跨って配置してもいいというルールを忘れて、1スクウェアにつき1つずつトラップを設置したこともあり、(最終回を除いて)今回だけ成長点がやたら多い(笑)。
■第4話「ポーションショック!」
王国錬金術協会の工房にグレムリンのグレズが住み着きポーションの流通が滞る。PC一行はアゼリアの依頼を請けて、グレズをなだめて話を聞くことに。曰く、自分の工具が人間(邪神トリアラクの教徒)に盗まれたからこのような行為に出たとのこと。
一方、街には粗悪品のポーションが出回り始める。PCは、ミールの話から動物実験が行われていることを推察し、動物から情報を得ることでトリアラク信者の錬金術師ミグェルを発見し討伐、グレズの工具を取り返す。
●獲得成長点:60点
ポーションを使うのは冒険者だけじゃないよということで、当初からやろうと考えていたシナリオ。そのため1話から錬金術師としてアゼリアを登場させておいた註4)。病人のヒロイン、ミール・オックスを登場させたが、もう少しポーション不足に悩む街の人を出して生活感の演出できたなと今にして思う註5)。
2話で別GMが大量のアンデッドを出現させたことから「こいつらと大規模戦闘ルールで戦闘できるのでは?」との発想に至り註6)、最終ボスが邪神教団、それもアンデッドの神でもあるトリアラクの信者に決定した。この4話からトリアラク教徒が敵として登場する。
ミドルはなるべく敵を倒さずにFS判定で説得を行うギミックを作成。攻撃に耐えながら進行値を進める狙いがあったのだが、FS判定自体の難易度が低すぎて全く機能しなかった。
FS判定がただサイコロ振るだけの作業になりがちなのをなんとかしたいというのがあり、チャットに書き込む難易度の隣に現在の状況を併せて記載するようにした註7)。情報収集判定と通常の判定の区別を付けられるように註8)チャットに記す難易度の記述法を変えたのもここから註9)。
■第5話「水の街の“淀み”」
ブル・ジョワンニの依頼を請けたまま行方知れずになったギルド“雄牛の巨角”がクラン=ベルで見かけられたという。
ソーンダイクの依頼を請けクラン=ベルで調査を進めるPC一行。“雄牛の巨角”はルモントが経営する裏闘技場にて魔獣ソレニオに殺されかけているところだった。“雄牛の巨角”を救出し魔獣を倒すが、ルモントはトリアラク教徒のメルウィンとともに逃げ去ってしまった。
●獲得成長点:84点
依頼を請ける冒険者もいつも必ず成功するわけではない、ということで失敗した冒険者ギルドを捜索するシナリオ。“長き腕”の説明もちょっとだけ入れて例に拠って世界設定の解説。
2話でドラゴンに宝を奪われた金持ちジョワンニがNPCギルドに依頼するも、PCが2話で既にドラゴンを倒して宝を本来の持ち主フランカに返していたため途方にくれてしまったという話がきっかけになり事件になる。どうでもいいが「あのドラゴンは自分たちが倒して宝は別のNPCに返した」ということをPC誰一人言い出さなくて笑う。普段は「斯々然々」で何でも話すのにこういう時は口が硬い(笑)。
併せて1話の犯罪組織と4話の邪神教団との繋がりを示唆して、物語に一貫性を出す。
情報収集は「街の地図上で情報を獲得できるところを提示し、回りきったところで、提示されていない行くべき場所を推測してもらう」という形式にしたが、判り辛かったようで想定以上に時間がかかってしまった、反省。
ミドルの戦闘では、トラップをカードに記入しランダムにスクウェア上配置。プレイヤーだけでなくGMもどこに何が仕掛けられているか判らないようにし、大惨事発生を目論んだのだが、PCの好判断によって敵がトラップのあるスクウェアに踏み込む必要がなくなってしまい、更にはPCが踏み込んだスクウェアのカードはことごとく何も発生しないカードばかり註10)。非常に悲しい結末となった。
クライマックスは裏闘技場からNPCギルド“雄牛の巨角”を助けるため、またしてもFS判定。実は転送石を手渡せば判定不要だったのだが、「進行値を8にするか、NPCをシーンから退場させればFS判定成功」と伝えただけではさすがに判りにくかったか。消耗品アイテムも使って欲しいなと考えてのギミック。この発想が次のシナリオに繋がっていく。
■第6話「祭典の“供犠”」
アルトリウス祭でグランフェルデンの街が賑わう中、邪神の教徒が少女たちを誘拐する。
ミールを目前で誘拐されたPC一行は、独自に調査を行う。隠されたアジトを発見しメルウィンを討つが、ミールをはじめ幾人かの少女は連れ去られてしまった。
神殿に救助された少女たちを連れていき、報告しているところに、邪教徒がアンデッドの王フランカから強奪したアンデッド軍団が動き出したと報告が入る。
●獲得成長点:75点
最終回に向けて、トリアラク邪神教団と対決する意志を持ってもらうために、邪教徒に少女ミール・オックスを誘拐させるシナリオ。
加えて、結末に向けてPCの過去話に幾つか触れる。最終回が近付くと突然シリアス展開になるギャルゲー原作アニメみたいだなあと自分で苦笑。今までPCの設定に余り触れて来なかったから仕方ないのではあるが、ちょっと唐突過ぎるかなと反省。
ミドル最初の戦闘ではPCの金を吸収して強くなる敵を作成。戦闘中の註11)金の管理は予め表計算ソフトで作成したシートを使用、オンセだとこういうギミックもやりやすい。
情報収集をもっと面白くしたいなという思いはずっとあり、この回ではFS判定と組み合わせてみる。街の地図を5×5のスクウェアに区切り、場所や施設ごとに使用する能力やスキルを記入した戦闘マップを作成、PCはその上で移動と判定を行う。それだけでは地味なので、障害として街のほぼ全域が[封鎖]されるイベントと、ボーナスエネミーが隠密状態で出現するようにする。街が[封鎖]される理由付けのために祭りを催すことにする。ふとアルトリウス祭ってのあったなあと思い出し、採用註12)。今までのシナリオでは特に季節感を出して来なかったが、ここで急遽、年末のアルトリウス祭の時期となった。[封鎖]については、5話で飛翔符をドロップ品で出したら悉く売り払われたので、絶対に飛翔符を使うシナリオを作成してやろうとひねくれた発想から(笑)。
これは想定はしていたが、FS判定だと達成値が高ければ全施設を回る必要がないため、与えたい情報が伝え切れず、翌シナリオに持ち越しとなってしまった情報もあった。キャンペーンだからできる手法かも知れない。
■第7話「邪神の“使徒”」(最終回)
アンデッドの軍勢が動き始めた。PC一行は籠城を考えるレティシアを説得してグランフェルデンの兵を動かし、アンデッド軍を討伐。
囚われの少女ミールたちを助けるため、アジトとなった廃城に乗り込み、トリアラクの邪神官マーティナ・マギルと対決する。
●獲得成長点:184点
最終回は予定通り大規模戦闘ルールを使用。『アルディオンレボリューションガイド』がどこにも売っていなくて入手に苦労した註13)。大規模戦闘ルールでもFS判定を使用するため、3話以降は毎シナリオFS判定を行うこととなった。戦場サポートなどは、いくつかGM側で選んだ中からPCに選択してもらう形に。
合戦とはいえ、先述の通りコンセプトは日常系なので、あくまでも誘拐されて生け贄にされそうになっているNPCヒロインを救うというシナリオにする。そのため、首領の目的も世界を征服するようなものではなく、信仰のため己をアンデッド化するという形に自然となった註14)。
初めは普通に成人男性の首領を考えていたのだが、上記のアンデッド化という目的を決定した時に某バグナードと若干被るなあと躊躇いを覚えて幼女ボスにした。断じて趣味からではない。
他のシナリオでも何回か入れたのだが、ゲッシュを取っているPCがいたため、ペナルティの判定を入れる。説得(難易度40の【精神】判定)と裏工作(難易度20の情報収集判定を2回)と2種類の解決策を用意。当然後者を選ぶと思っていたら、前者に挑戦したのは完全に予想外だった(笑)。
初の大規模戦闘は大変だった。敵が無限に湧くので、その管理方法はもう少し検討する必要がありそうだ。ある程度数を減らして戦力の不利を解消してからFS判定を成功させる、という流れが自然にできるようなシステムになっていて、さすがに良くできていると実感。
6話の敵が弱すぎたので、最終回はかなり細かく数値を計算、厳し目に設定。これが功を奏し、最後はPCの攻撃が当たってくれるように(GMも)願うくらいのかなりギリギリの戦いになった。最も、自分もプレイヤーも幾つか計算を誤ったりしていたので偶然の要素も大きいのだが。逆にクライマックスのスクウェアに設置したオブジェクトの柱は、余り深く考えずに配置したのだが、PC側が上手く使ってくれた。ただ、敵の攻撃が激しすぎたため、アコライトのPCは回復に手いっぱいで殴る手番がほとんどなくてちょっと申し訳なかった。
データに関しては、後日別稿にて提示したいと思う。というわけで書いた>アリアンロッド2Eキャンペーンデータ
最後に、NPCのヒロイン、ミール・オックスの苗字オックスは昔近所にあった牛丼屋の店名から拝借した。
元々別な姓を考えていたのだが、キャンペーンの期間中に急逝した松来さんの代表キャラが牛丼屋註15)なため、弔意を込めて命名した。ヒロインらしからぬ(?)厳つい苗字なのはその辺りに理由がある。
■註
- まあぶっちゃけると、ことほのうみの3人(笑)。ギルド名もミューズ(ギリシャ神話の音楽の神)→ダグデモア(エリンの音楽の神)という安易な連想から。
- ミアに妹がいる設定は『ゆるゆり』観てる時に思い付いた。《ディテクティブ》持ってたりするのは中の人ネタ。
- シーフがトラップ対策にリソースを割いていることもあり。
- アゼリアは元はshfboo氏のPCで、knt著のリプレイ「アリアンロッド・リプレイ「瘴気の街」」に登場する。
- 病気やケガ以外にも錬金術肥料が手に入らずに困る農家とか錬金術洗剤の不足に悩む商店なんてのも出せたなと後から考え付いた。
- エリンディル西方でも大規模戦闘ルール使えるシナリオはやれるなあと以前から考えていたこともあり。
- 「初期(グレズに話を聞いてもらうために誠心誠意話しかける):【精神】12(《オピニオン》有効)」のように記述。
- 情報収集用のスキルやギルドサポートの使用可否を判りやすくするため。
- 通常の判定「反対勢力への説得:【精神】40《オピニオン》」、情報収集判定「砦について:情報収集【知力】18《ヒストリー》」のように記述。
- 4連続何も発生しないカードを引く確率は、およそ0.5%くらいにしかならなかったはず。
- この戦闘中だけはPCの所持金も管理。処理高速化のため。
- アルトリウス祭の記述は『アリアンロッド・リプレイ・ハートフル ─ 聖雪のキャンパス』に詳しい。
- 最終的には神保町で発見した。
- 部下たちは信仰のためではなく、それぞれの利益や欲望のためにアンデッド化したがっていたという設定もあったのだが、語る機会がなかった。この辺りの敵NPCの思惑は全く演出できず、かなり重大な反省点の1つである。
- 正確に言うと、漢字は異なる。
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