新・のび太と鉄人兵団

 昨日の話だが『ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~』を観てきた。本当は先週のうちに行きたかったのだが地震の影響で最寄の映画館が1週間休業していたため、大分遅れてしまった。
 ネタバレを含む感想を続きに。

 今年も開催された「大人だけのドラえもんオールナイト」には行かなかった。去年の『ドラえもん のび太の人魚大海戦』では行ったのだが、映写前の鼎談で監督・脚本・チーフプロデューサーがつまらなかった時の責任の押し付け合いをしていて、それが冗談だと思っていたら本当に映画が面白くなかったという悲しいできごとがあったからである註1)
 前作最後に予告があったように今年は『のび太と鉄人兵団』のリメイク。大山ドラの『のび太と鉄人兵団註2)は自分が初めてきちんと観たドラ映画ということもあって一番好きな作品である。今までリメイクは3作られているが、どれもリアルタイムでは観てこなかった作品ばかりだった。今回初めてリアルタイムで観た作品、それも一番好きな作品をリメイクするというのだから、不安にならないわけがない。ましてや原作に登場しない新キャラクター(ピッポ)までいるのだから余計に心配もするというものだ。

 だが不安は嬉しいことに的中しなかった。大本の物語は原作に沿った上で、ピッポという新キャラクターを加えたおかげでより深い物語が描かれる良作になっていたように思う。
 ピッポはジュド(ザンダクロス)の頭脳で、地球に来る前、メカトピアにいた時からリルルとジュドには深い交流があり、心を通わせることができる仲であった。その2人がそれぞれしずちゃんやのび太と多面的に交流することで、リルルの持っていたメカトピアの思想註3)を改めていく過程が原作・旧作より鮮明化して説得力を持っていたように思う。前述の通りピッポはザンダクロスの頭脳であるので、ザンダクロスが敗れる場面ではより悲壮感が増してたのも良かった。
 原作中ではドラえもんはあんまりロボットとして描かれていない。それはそれでドラえもんはロボットである前に友達であるという藤子F先生の意図を窺い知ることができて良いのだが、せっかく敵対者としてロボットがいる作品註4)では、ロボットであることをもうちょっと生かせばいいのになと思ったりもする。その点今作のピッポはドラえもんがロボットであることにツッコむ台詞があり、視聴者の疑問点(?)を解消する役にもなっていたところも面白かった。

 新キャラクターのピッポばかり称賛しているが、もちろんリルルも良い。リルルとしずちゃんの会話はほぼ原作通りなのだが、鏡面世界註5)で出逢う前に街中ですれ違う印象的な場面が挿入されており、こういう場面を作るところが『のび太の新魔界大冒険 ~7人の魔法使い~』でも女性同士の友情を描いた寺本監督らしいと感じた。
 クライマックスでは神である博士からただ指示を受けるのではなく、自分がのび太やしずちゃんたちから受けてきた優しさをメカトピアの祖であるロボットのアムとイムに伝えるという原作からの改変も評価できる。かわいい作画と沢城みゆきの素晴らしい演技もあって、リルルも実に魅力的なキャラクターになっていたと感じる。

 原作中のギャグもテンポよく組み込まれてて、面白かった。あと個人的には鉄人兵団の「あのビルだ!」という台詞、旧作の予告で使われており非常に印象に残っていたので、今作でも削られなくて良かったな(笑)。作画も今までのわさドラ映画で感じた不自然な乱れもなく、ザンダクロスの巨大感も充分に演出されていて良かった。
 ただ今作ではミクロスの出番が(ドラえもんによって自律し喋るように改造される場面が存在しないために)ほとんどなかったのがちょっと残念。旧作の三ツ矢雄二の声が特徴的だったので、今作ではどんな風に喋るのかなと気になっていたので余計に。
 まあ久し振りに心の底から面白かったと言えるドラ映画だと思う。寺本監督には今後も映画ドラの監督をやって欲しいなあ。次回予告ではモアらしき巨鳥が出ていたので、『のび太の雲の王国』のリメイクだったりするのかしら。

■註
  1. 結局「オールナイト」告知前に前売り券を買っていたので2回観たが。
  2. 以下大山ドラ版『のび太と鉄人兵団』を旧作・『新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~』今作と呼称。
  3. 人間をロボットより下等な存在とみなし、奴隷化することが当然という考え方。
  4. 『鉄人兵団』だけでなく『ブリキの迷宮』なども。『ブリキの迷宮』の映画では登場人物がドラえもんがロボットであることを非難する台詞がある。
  5. そういえば、今作では鏡面世界という言葉は使わないで一貫して「鏡の世界」であった。

ひとこと

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