アリアンロッド秘密ありセッション

 古くは『ソード・ワールド/1st』のシナリオ「マスカレード」、最近では(とは言ってももう5年以上前だが)『ダブルクロス3rd』のリプレイ「メビウス」や「春日恭二の事件簿」といったような“他のプレイヤーが知らない秘密”をPCが持つセッションをプレイすること、これは長年TRPGをやっている上で1つの夢であった。
 しかしGM・プレイヤーともに技術的な問題あり、何度か構想を練ってはお蔵入り。後に一部のPCにだけ秘密を持たせるといった形のシナリオは作成したが、PC全員が秘密を保持しているプレイは今一つ踏み切れないでいたのであった。

 8月、次に行う『アリアンロッド2E』の単発シナリオを考えていた時、ふと「今の面子なら行けるのでは」との考えに至る。既に6つも『AR2E』のキャンペーンを回してきた連中である、プレイヤーとしては充分に技術があると思えた。あとはGMである自分の問題だけだ。
 幸い夏季休暇で一週間くらいシナリオ作成に費やすことができ、GMの技術力を時間でなんとかできそうなこともあり、初の秘密ありのセッションを敢行することにする。プレイヤーに発表した時はどんな反応があるかと少し緊張もした(笑)。

 シナリオは下記の通り。

 エルーラン王国の王都ログレスに、魔族ラドゥを追ってPC1とPC2がやってくる。一方PC3はPC4を雇い、王城の銀嶺城で盗みを働いた“怪盗”ミドゥブライトの捜査を開始する。
 ミドゥブライトは殺しを行わなず悪人から盗む義賊だったが、銀嶺城では1人の警備兵を殺害、それと同時にアンナ王女を邪悪化していく。銀嶺城の一件は魔族ラドゥがミドゥブライトの名を騙った犯行であった。
 かつてミドゥブライトに盗みに入られた悪徳領主メイソン子爵は、ミドゥブライトの義賊という名声を堕とすために魔族ラドゥを利用して殺人を行わせる。PCはそのことを突き止め、国王エル十三世直筆の御免状を以てメイソン子爵の屋敷に乗り込んで証拠を見つけ、魔族ラドゥと邪悪化したメイソン子爵を討つ。

 過去にパリス同盟・キルディア共和国をキャンペーンの舞台にしてきたので、それ以外という理由で選んだエルーラン王国を舞台に。シティ・アドヴェンチャー向けのNPCが多く、ちょうど良かったように思う。
 単発ということで敵以外に独自のNPCはほとんど出さず、ベアトリス枢機卿やイレーネ・ハルトマン、二代目キット・クォークといった公式キャラクターを使用。『トラベルガイド』初出のキャラクターは9つも歳を取っていて、自分のシナリオにしては登場人物の平均年齢がかなり高め(笑)。
 アリアンロッド公式の怪盗キャラは末尾に「ライト」が付くので(ムーンライトやアレキサンドライトなど)、それがエリンディル西方の流儀なのかとミドゥブライトと花の名を付けたのだが、意図せず魔族ラドゥと若干被ってしまった(苦笑)。

 各PCの表向きの設定/秘密は下記の通り。

  • PC1:魔族討伐依頼を請けた冒険者/ディアスロンドの神聖騎士団の一員
  • PC2:魔族に奪われたものの奪還を目指す冒険者/奪われた力を取り戻そうとする上位魔族
  • PC3:ミドゥブライト事件の捜査をするエルーラン王国の衛兵/諜報機関“ハルトマン・システム”の一員
  • PC4:PC3に雇われた冒険者/真の“怪盗”ミドゥブライト

 これら設定はGM側から提示した。PC1は魔族に《真の死》を与える聖遺物の武器を持ち、PC3はギルドサポートの《御免状》をレベルに関係なく持っていける、など各PCごとに特殊な能力やアイテムをリバースハンドアウトで付与、その上でキャラクターを作成してもらう。
 リバースハンドアウトには秘密やデータ以外に、事前に持っている情報や、調べることができる情報項目などを掲載。通常のシナリオに比すると予め把握しておくことが多く、プレイヤーも大変だったと思う。こちらの伝達不足になってしまったところもあったので、それは大いに反省。今後課題にしたい。

 実際のセッションでは、やはり初めてのシナリオ形式なのでプレイヤーも戸惑い気味な部分はあったが、各々上手く立ち回ってくれたように思う。
 PC1のプレイヤーはわざと(?)メタ的に自分の正体が判るような動きを取り、そのおかげかPC2のプレイヤーは自分の目的が達成できることが判ったようで、安心して邪悪化した街の人たちを救って歩くことができた。
 PC2は正体が魔族なので、プレイヤーはおそらく一番大変だったと思うが、嘘の正体をうまく他のプレイヤーに信じ込ませたところは見事だった。思わず画面越しにニヤニヤしてしまった。
 PC3のプレイヤーは、アンナ王女の治療にこちらが提示したNPCではなく、PC2を引っ張ってくる。PC同士で絡めるよう各プレイヤーに別々の情報を渡していたので、そこに気づいて他PCの持つ情報を使ってもらえるとGMは嬉しいものである。
 PC4のプレイヤーは推理の方向性を積極的に発言してくれ、助かった。おそらく他のプレイヤーも時期の差はあれど犯人の目星はついていただろうが、明確に発言してくれるとGM側は情報が正しく伝達できていることが確認できて、実にありがたい。

 今回はPCの秘密の公開はシナリオクリアの上で必須ではない。公開必須にしてしまうとシナリオ作りはより困難になるし、プレイヤーに対しての難易度も高くなってしまう。またPC間での利害対立も盛り込まなかった。
 そのため他のPCを調べなくともシナリオの解決には問題ない作りになっている。実際、他のPCを調べることはほとんどなかった。
 とはいえ物語の上の秘密は白日の下に晒されることに存在意義があるので、公開した場合は成長点を獲得できるようにしている。この辺りは『DX3』を参考にした。
 秘密公開の時期はプレイヤーも図りかねていたようで、公開を促すシーンをシナリオ内にもう少し入れられれば良かったという後悔もある。
 GM側から秘密についてもう少し補佐や提案できたとか、逆に余計なこと言わなければ良かったと思うこともしばしば。「余計なこと」は何度か言ってしまい、今回一番反省している点かもしれない。

 プレイ時間はどうしてもかかってしまう。プレイヤー同士腹の探りあいで長考になることもあり、いつもは12時過ぎに開始して18時には終わるところ、19時半くらいまでかかってしまった。
 戦闘もお互いの能力が判らないので手探りなものになってしまう。また普段ならプレイヤーが迷っている場合、GMから使用スキルの提案もするのだが、能力も秘密の一部である以上、GMが使用前のスキル名を言うわけにもいかず、なかなか困った。
 そんなこともあり戦闘は短くせざるを得ず、あまり強いエネミーにはならなかった。せっかく普段使えないスキルやギルドサポートを使っているPCもいたので、申し訳ないなとこれまた悔いが残る。

 今回のセッション、いつも以上の疲労といつも以上の後悔と反省が山積みとなったが、実に楽しいセッションだった。長く同じシステムでプレイしているので、今回のような“変わったこと”をやりたいなという思いは常にある。
 長くやっているプレイヤー仲間がいないと実現できない今回のセッション、プレイヤー諸氏には本当に感謝している。プレイヤー側も普段より手間がかかる“変わったこと”にまた是非付き合っていただきたい(笑)。

ひとこと

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