前田智徳
- 話題:野球 > カープ
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ここ数年は「前田が引退するんじゃないか」と懼れを抱いてシーズンを迎えていた。特に今期は、昨年石井琢朗が引退したこともあり、(球団としては大選手を一度に引退させたくないだろうから)興行的な面から言っても次はいよいよ前田か、と覚悟を決めていた。
だが実際にシーズンが始まると、代打での良好な結果を見て「これはまだまだやれそうだ」と懼れは払拭、死球での骨折で登録抹消されたことも却って不完全燃焼になる今期では引退しないだろうと思うようになった。抹消時の「長い間お世話になりました」という野村監督への挨拶も度々発する得意の自虐で退く気は毛頭なかろうと考えていたし、引退会見を聞くに事実そうだったのだろう。
それだけに引退発表は衝撃だった。既に緒方は引退、去年は金本、そして今年の前田。大野と正田が引退した年にも感じた「カープの一時代」の終焉を、今回はそれ以上に強く感じる。
技術的なことは語れないので非常に稚拙な表現になって汗顔だが、前田の音もなくスッとバットが出されるかのようなスウィングにはいつも痺れた。
前田の打撃で印象に残っているのはケガから復帰した年の1号本塁打。調べてみると2002年の4月5日で旧市民球場で山本昌から打ったようだ。本塁打もだが、インタビュー受けている途中で落涕し、その試合で解説していた達川元監督に「監督、ご迷惑をかけました」とボロボロ泣きながら謝罪する姿が特に目に焼き付いている。この年にカムバック賞を取った。
金本は前田を評して「故障がなければ、間違いなく3000本安打を打っていた」と言っている。間近で見ていた金本の評価であれば、そうなのかも知れない。本人は最後まで「僕は世界一、湿布とテーピングを使った野球選手」と自嘲的な言葉を吐いている。前田には、どうしたってケガに泣いた選手という印象は確固として存在する。
しかし、それほどまでしてケガと闘い続けてきた前田が自分は実に好きだ。それは負傷した身体でプレイを続けることに対しての同情や憐憫などでは決してない。ケガ後、以前にも増して求道的となり、真摯にそれこそ世界一湿布とテーピングを使ってまでもケガと闘う姿勢と、その中で高い結果を残してきた事実が、私の、そして多くのファンの心を捉えたのだろう。
野球評論家として解説をしていく中で指導者としての勉強をして、いずれはコーチとして球団に帰ってきて欲しい(恐らくは既定路線であろう)。
とりあえずは好きなゴルフと甘い物でも遣りながら体を休めてください。24年間ありがとうございました。
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