ドラえもん のび太のひみつ道具博物館
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今年のドラえもんの映画、「のび太のひみつ道具博物館」の2回目の観賞に行ってきた。作品のネタバレ込みの感想を続きに。
率直に言って、ドラえもんたちがひみつ道具博物館内に足を踏み入れた時点で、これはやられたと言わざるを得ない。『ドラえもん』作中に登場した数々のひみつ道具が、何の必要性もなく画面上に登場するのだ。それでいて博物館という説得力のある背景があるので、違和感を覚えることもない。
「レポーターロボットだ!」とか「世話焼きロープ!」とか展示されているひみつ道具を発見していちいち嬉しくなる。1場面1場面登場する全てのひみつ道具を特定したいと思わせる楽しい画面構成になっており、ほぼ博物館内で語られる物語であるため、このような楽しい画面がほぼ全編を通して展開される。子供はもちろん、自分のようなドラえもんオタクとしてはそれだけで楽しい。
もちろんそれだけではない。各キャラクターごとの見せ場もきちんと用意されていて、物語の解決の意味づけがきちんとなされている。ジャイアンの勇敢さ、スネ夫の技術力、しずちゃんの知性(と裸になるシーン(笑))、ドラのび以外の3人にもきちんと見せ場がある。
個々の伏線張りとその回収もしっかりなされており、推理物の体裁を成しているのも素晴らしい。さりげない伏線の張り方などは藤子F先生を髣髴させる箇所もあった。今までのオリジナル作品にあった物語の唐突な展開、というものは今回の作品では一切感じられなかった。
また敵役の特に怪盗DX・ペプラー博士たちのキャラクターも魅力的だった。コメディ作品としての敵役としてまさに適任と言える人々で、嫌味もなく、それでいてクライマックスを発生させる人たちとして相応しい。ペプラー博士の応援したくなる設定と憎めない千葉繁の演技は本当にすばらしかったと思う。
そんな今作の中で一番印象的に感じたのは、ドラえもんとのび太の友情を描いた挿話である。
ドラとのび太の友情というのは、原作中ではなにかきっかけがあったというわけではない。なんとなく長く付き合っていく上で生まれたある種リアルに男同士の友情を描いている(こういう部分、藤本先生と安孫子先生の関係が意識的・無意識的に反映されてる気がするのだがどうなんだろう?)。
だが今作ではそんな2人にネコ集めすずの挿話を差し込み、友情のきっかけを作る。こういう話は恐らく藤子F先生だったら絶対に描かない話であり、逆に女性である寺本監督らしいなと自分に強い印象を与えることになった註)。物語中に効果的に挿入・演出されるのだが、挿入のタイミングや尺なども本当に上手い。特技の射撃を殊更披露することのない今作ののび太だが、それを補って余りある印象付けをすることに成功していると感じる。
ドラえもんオタクを喜ばせるひみつ道具博物館の登場、そしてドラえもんとのび太の友情のきっかけの場面、どちらもおそらく藤子F先生だったら描かなかったであろう。それでいてしっかりドラえもんの映画になっているのは、監督自信が(「ひみつ道具大事典」を読み込んだとインタビューで言っているが)『ドラえもん』をよく読みこんで、意識して作品作りに望んでいるからなのだろう。付け加えて言えばエンディング曲も良かった(劇場では子供たちが口ずさんでいた)。
もちろん不満がないわけではない。例えばドラえもんの野生化は何故こんな設定を入れたのか意味が判らなかった。しかしそれでも今回の『ひみつ道具博物館』はわさドラの映画ドラえもんオリジナル作品の中では最高の作品とハッキリ断言できる(まあ今までのオリジナルがひどかったというのはあるが)。
毎年恒例、最後に流れる来年映画の次回予告は、今回はハッキリと原作『大魔境』の原作コマが映っていたので、『大魔境』のリメイクと思われる。
『大魔境』の映画は1度か2度くらいしか観たことがなく、そこまで思い入れがある作品ではないが、それでもどんな風にリメイクされるか楽しみと不安が入り混じった感情でいる。
今作で寺本幸代監督の実力に確信を持てたので、次も寺本監督なら嬉しいけど、どうなるのかなあ。
●註
- 寺本監督はインタビューで「ドラえもんとのび太の関係を、映画の隠れた柱としてきちんと描きたいなと思っていました。」と述べている。
http://doraeiga.com/2013/interview/
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