■Ending Phase01

「無事だったようだな」
 赤い髪の精霊は、初めから判っていたかのように虎の頭を持つ精霊を見上げて語りかけた。
「言っただろう、そのためにここにいる、と」
 そして彼もまた、それがさも当然のことだと応える。

 コーティカルテはそう言ってティガーボルトに先んじて歩き出す。
 2柱の精霊は、久しぶりの再会を祝すために夜の街へ消えていった──。

■Ending Phase02

 ソルティアーネは最愛の精霊に聞こえないよう小声でつぶやく。
「エミリオに愛想つかされないようにね……」

「それと、ロヴィスはロヴィス、ソルティお嬢様はお嬢様ですよ。それぞれです」
「な……なんのことかしら♪ あはは」

■Ending Phase03

「カジヤマの……彼の研究は、たしかに支配楽曲に通じていました。しかし、彼がやりとげずに残ってしまった仕事にはそれを中和し、本来の神曲の力を増すような可能性もあったんです」
「私はあいつの後を10年追い続けてきました。しかし私は神曲をある形式のパターンとしか見ず音楽とは見えていなかった。カジヤマは最初からそれを音楽と思っていたのです。だからこと支配楽曲になってしまったときの絶望も大きかったのでしょうが」

「あの土壇場で私は初めて形式パターンだけでない音楽を知り、弾くことができました。みなさんのおかげです。そして……カジヤマの」
 老紳士はそういって、沈黙し、やがて静かにピアノを弾き始めた。それは旧友へのレクイエム……しかし優しく穏やかな小曲だった。

 しばらく演奏が続き、あたたかい陽光が照らす窓に、小さな影が現れる。それに気づいたが、彼は気にせず演奏を続ける。

 老紳士はその時は思ってもいなかった。その影が、彼の調べにひかれ、彼と契約精霊として共に生きることになる者の姿だったことを……。

■Ending Phase04

「ロヴィス、ソルティアーネは確かにお前を超える才能を持っているな」
「いや、私自身がお前に縛り付けていたこの身を、彼女は解放してくれようとしている」

「昔は理不尽に思ったものだが、今はソルティアーネに会わせてくれたことを感謝するよ」
 

「では、おやすみ、ロヴィス」

 エミリオはそっとヴァイオリンにキスをすると、その場をあとにする。
 パティータ事務所からはにぎやかな笑い声が聞こえてきた──。

神曲奏界ポリフォニカRPG「悲しき数式」──完

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